ご利用者さんお一人おひとりに合わせたデイサービスの実現

茨城県取手市のデイサービスよりみち 代表の島田様にインタビューしました。

よりみちさんは定員が17名の地域密着型デイサービスで、ご利用者さんお一人おひとりに合わせたレクレーションや機能訓練を実施しておられます。

今回、アレグロペンギンにお声がけいただき、Kotobukiプロジェクトとしてよりみちさん独自のシステムを開発しました。

導入に至るまでの経緯や実際に一緒に取り組んでみてどうだったか、システムをどのように活用されているのかお聞きしました。

 

利用者さんと働く人にとって、居心地良い生活の場を作る

-事業のコンセプトや理念を教えていただけますか?

デイサービスは利用者さんの生活の場であり、働く人の生活の場でもあります。

そこで生活する全員にとって幸せを感じ、ひとりひとりが自分の居場所であると感じてもらえるようなデイサービスをコンセプトにしています。

大手の介護システムを利用していたが…

デイサービスの建物も木のぬくもりを感じる広々とした空間で居心地が良いです。

-よりみちデイサービスを開業された当初より大手の介護システムを使われていたそうですね。

はい。広告か何かを見て、大手の介護システムを最初から導入していました。

これのおかげもあって、デイサービスをスタートする際の最初のハードルを乗り越えることができたかな、と思います。

ただ、既存の介護システムを使い続けていると、そのシステムに依存したデイサービス運営になってしまい、だんだんと与えられた仕組みの中で思考停止になってしまう不安このままでは嫌だなという感覚がありました。

他の多くのデイサービスでも同じものを使っているということは安心感もありますが、デイサービスの独自性を出しにくい、という側面もあります。

デイサービスの運営を進めていくうちに、一度自分たちの業務を自分たちなりに設計したい、という気持ちが大きくなり、ICT化をその足がかりにできればと考えました。

-そんな中でアレグロペンギンを見つけていただいて、お声がけしていただきましたね。

デイサービスの業務改善、システムといったワードでインターネットで検索していて、アレグロペンギンのコンテンツに辿り着きました。

何度かWEB会議でお話しさせていただくなかで、事業所のコンセプトにあったシステムを作りたいということ、そのコンセプトについてじっくり共有することができ、Kotobukiプロジェクトを一緒に立ち上げることにしました。

現場のスタッフを巻き込んだプロジェクトはそのプロセス自体が組織づくりに大きく影響

ipad版のトップ画面

-最初は現場のスタッフを巻き込むことに苦労されていましたね。

そこに関しては、私の反省ポイントです。

実際の業務はスタッフに任せている部分も大きいので、スタッフにも話を聞かなければ進まない状況ではありましたが、なかなかKotobukiプロジェクトのことを切り出すことができず、停滞していた時期がありました。

しかし、瀬木さんにも介入していただいて、現場からも要求だしや議論を活発にできるようになり、参加しているスタッフも自分たちで作っていった実感が持てていると思います。

開発のプロセスそのものが研修と言いますか、利用者さん目線で自分たちの事業所の在り方を考える良いきっかけとなりました。

利用者さん個人に目が向くようになり、利用者さんも増えました

-Kotobuki導入による効果はどのようなものがありますか?

一番の大きな効果はスタッフの意識改革です。

朝からipadでKotobuki を操作していますが、Kotobukiに利用者さんの情報を入力する際に、他のスタッフが入力した情報も自然と目に入り、それがきっかけでスタッフ同士が利用者さんに関して話題にすることが増えました。

先日のスタッフ会議では、”気になる利用者さん”という議題がトップにきていて、会議の中でも一番時間を使った話題となりました。

以前はデイサービス全体のことが中心でしたので、利用者さん個人に目がいくようになったことは、大変な意識改革だと思います。

それから、ご家族やケアマネージャーさんへの報告も仕組みを整え、関係が構築しやすくなっています。お取引のあるケアマネージャーさん数名に、”どのような報告がケアマネージャーさんにとって有意義か?”ヒアリングさせていただき、その声を元にKotobukiで仕組みを作りました。

ケアマネージャーさんとの連携はデイサービスの運営において非常に重要で、その関係を太くできたことで、利用者さんを新たに紹介していただいたり、既存の利用者さんのケアにも役に立っています。

Kotobuki導入を決めたときは、コロナの影響もあり、経営的には苦しい局面でしたが、”環境を整えることが先”という考えで、プロジェクトを続けてきました。

パソコン版のトップ画面

現在では、利用者さんも順調に増えて経営的にも楽になっています。

利用者さんが増えたことには色んな要因があると思いますが、Kotobukiの効果やそれまでの開発プロセスの中で培われた組織文化による影響も大きいと感じています。

色んな話をしながら、業務改善に取り組みました

-アレグロペンギンと一緒に取り組んでみてどうでしたか?期待していたことは叶えられているでしょうか?

私としては楽しいときを過ごしたな、というのが第一の感想です。

ITというと即物的なもののようなイメージがありますが、福祉ということもあり、単なるビジネス的な付き合いではなくて、理念を共有できるかとうかも重要かと思います。

瀬木さんとは直接システムと関係しないような話も含め、色んな話をしました。

毎日使うシステムだからこそ、事業に関する想いや考え、日常業務で感じたことなどから一緒にシステムのアイデアを紡ぎだせたことは意味のあることだったなと感じます。

スタッフや取引先も巻き込んで、我々に馴染むシステムが構築できたんじゃないかと思います。

 

-ありがとうございます。最後にこれからの目標やビジョンを教えてください。

私はもう引退を考える時期にありますが、どのように引き継がれるにしても、よりみちらしさを大切に、みんなの心休まる場を耕しておきたいという気持ちがあります。

そのためにも、Kotobukiで蓄積される、私たち独自の利用者さんのデータをさらに人間的な利用、議論の入り口にできるよう、活用していきたいと思います。

 

【インタビューを終えて】

島田さんにはアレグロペンギンのホームページからお問い合わせいただき、すぐにWEB会議をご提案していただき、最初からとても強い熱意を感じました。

経営者さんがこのようにIT化、業務改革に対する気持ちが強いとプロジェクトがうまく進むなと感じます。

例えば、お話の中にもあった取引先へのヒアリングは私から提案したことですが、提案を受けすぐに直接ご自分で取引先まで足を運び、有益な情報を仕入れて来られました。

直接エンドユーザーである現場スタッフの皆さんがシステム開発に関わる際、現場の利益とプロジェクトの目的のバランスをとりながら要求を出す、ということは誰にとっても難しいことであると思います。

今回のプロジェクトでは、組織づくりもプロジェクトの目的のひとつであったため、そこにも時間をかけて、時にはぶつかり合いながら取り組みました。

最終的にはスタッフの皆さんが、利用者さん目線で業務フローを描くことができるようになり、ある業務をする意味や目的から、どのようにスタッフが動くべきか、どのようなデータを取得すれば良いかといったように、不確定性コーンを意識した意思決定ができていたと思います。

リモートでのやり取りで、ご不便をかけることも多かったと思いますが、お互いを尊重しながら、プロジェクトを育ててこれたのではないかと思います。

今回、よりみちデイサービスではKotobukiを導入するにあたり、ICT導入支援事業に申請し、採択されています。補助金も大きな後押しになり、一歩踏み出せたとのことです。

 

【よりみちデイサービス】

〒302-0017 茨城県取手市桑原6−3

父が語る、デイサービスでの業務改革の軌跡

アレグロペンギンの原点は父が経営するデイサービスでの業務改革でした。
その父に業務支援システムKotobukiについてインタビューしてみました。

 

独自のサービスでご家族にとっても無理のない介護生活を

おんせんケア の理念や事業内容を教えてください。

温泉を使って人の幸せを支えたい、という思いを軸に、デイサービスやお泊まりサービス、居宅介護支援事業所を展開しています。
ご利用者様だけでなく、ご家族や働いていくれるスタッフの幸せを考えています。

 

汎用のソフトを導入しようと試みたが…

–開発をはじめる前は、どのような課題がありましたか?

エクセルや手書きのメモを使って、デイサービスの業務をやりくりしていました。

エクセルから印刷した紙にその日のご利用者さんの体温や血圧といったバイタル情報、出来事などを手書きでみんなで記入し、1日が終わったときに、その情報をエクセルのシートに書き写して、日々の記録を管理していました。

そのようなやり方では、リアルタイムな情報共有が気軽に確認できなかったり、情報の検索が困難で、書類の作成も転記作業が多く生じていました。

汎用のソフトをこれまで導入しようとしたことはありましたが、自分たちには必要のない余計な項目が多く、書類ひとつ作るにも分量が多くなってしまったり、入力がしにくく、自分たちに適したものはないな、と感じていました。

では内製で作った仕組みはどうかというと、書類のテンプレートをエクセルで作成するくらいが精一杯でした。

 

ひとりで要件を整理し開発するのは難しいのでは

–Kotobukiの構想を聞いたとき、どのように感じましたか?

データベースを使ったKotobukiの構想を聞いたときは、

「そういうことができれば良いけど、開発するのはかなりのパワーがいるのではないか」

「データベースに落とし込むために整理するのは難しいんじゃないか」

と感じていました。

しかし、FileMakerの無料試用期間45日の間に利用者マスタやケアマネマスタなどがすでに出来上がっており、利用者マスタの詳細画面から基本情報だけでなく、ご家族やケアマネージャーさん、利用曜日といった情報が一目でわかるというところまで出来上がっていたので、

「ここまで作ったなら引き続き開発を続けてもらおう」と思いました。

(利用者マスタの内容は全てダミーです)

 

デイサービスでの介護の記録と介護保険がうまく繋がった

–実際にシステムが稼働してから、どのような効果がありましたか?

一度メモに起こしたりせず、スタッフのみんながそのまま情報をKotobukiに入れてくれるようになったので、即時性が高まっています。

書類の作成が楽になったり、ご利用者さんのご利用予定などの把握が正確にできるようになったことだけでなく、ご家族やケアマネージャーさんとの関係づくりにも役に立っていると思います。

例えばデイでのご様子から病院の受診を勧めるといったご提案をするにも、ちょっとしたことに気づくかどうか、ということが重要です。

シフト制で働いている職員も多いため、自分がいなかった時の情報を補完することが必要ですが、Kotobukiで気軽に確認できるので、気づきの機会が増えていると思います。

そのように情報を外部に発信するための動線がKotobukiで整備されました。

もうひとつ副次的な効果としては、Kotobukiで入力したことをslackで通知できる機能があり、その兼ね合いでslackのようなITツールを自然とみんなが取り入れる文化が生まれた、ということです。

 

–Kotobukiをどう思いますか?

最初に想像していたものよりも、ずいぶん良いです。

私たちの業務の流れの中で、必要な情報が必要なタイミングで表示されています。

特に、実績の確認をするための画面を見ると、サービスコードや加算といった計算の結果と実際のご利用の様子を自分の中でリンクでき、ひとつひとつの情報に納得しながら、実感を伴った作業ができます。

間違った請求をしてしまうとかなりその後処理が大変ですが、この仕組みはそういったエラーを限りなく0にしてくれていると思います。 精神的に安心でストレスが減りました。

各会社ごとに適したシステムができれば価値は高いと思います。

FileMakerで作られていることは意識せずとも活用できている

-FileMakerをどう思いますか?

Kotobukiを使うときに、これがFileMakerで作られたものであると意識することはないので、正直なところよくわかりません。 ユーザー自身も学んでいくと、高度な検索ができるのかな、と思っています。

Kotobukiのような仕組みを一人で構築できるというのは、良いシステムなんだろうと思います。

(画像に表示されている利用者名はダミーです)

 

–父親としてはアレグロペンギンの活動をどう思いますか?

一気に集中していつの間にか何かを作り上げている、というようなことが子供の頃からあって、幼稚園で親からの評価を聞かれたときにも、創造性がある、と回答したことを覚えています。

人からの意見を抽象化するようなことも得意だと思うので、そうした特性がシステム開発やコンサルティングに向いているんじゃないでしょうか。

そういった特性を伸ばしながら価値を高め、気楽に、ちょうど良い規模で頑張って欲しいです。

 

 【インタビューを終えて】

私の思いつきで半ば強引に始まったシステム開発でしたが、開発を始めてから5年以上が経ち、組織に根付いていることを嬉しく思います。

Kotobukiのようなシステム開発する際、システムも業務に組み込まれる人格のひとつのように捉え、運用中のシステムとユーザーさんの会話を想定しながら設計しています。

今回、業務の中で必要な情報が必要なときに表示されている、情報の見せ方によってストレスが減っている、との声を聞くことができ、会話がうまくいっているようで嬉しいです。

介護業界はコロナの影響で大きなダメージを受けていますが、デイサービスの利用により、元気に生活できている利用者さんがたくさんいます。
Kotobukiもデイサービスの運営・経営を助けることで、ご利用者様やご家族に貢献できればと思います。

 

 

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